Friday, December 23, 2016

彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? Wシリーズ (講談社タイガ)

森博嗣のWシリーズというのが出ていたのをまったく知りませんでした。女王シリーズの流れということで面白そうなのでさっそくシリーズ1作目の「彼女は一人で歩くのか? Does she walk alone?」を買ってみる。タイトルはもちろんディックのDo Androids dream of electric sheep?のオマージュ。各章の引用も同小説からだ。

全体的にはミステリというよりは近未来SFになっていて、女王シリーズからは順当な流れだとも言える。ただウォーカロンて女王シリーズでは完璧にアンドロイドだったのに、今作では人間のDNA(または細胞?)から人口培養(作内の表現では「養殖」)された存在ということになっている。これがかなり不思議で、自分からするとこれは科学技術的に退化しているように思える。これだとウォーカロンはあくまで人間のコピー、及び遺伝子改良された人間の亜種、進化種でしかない。ウォーカロンの知性の高さが時折書かれてるけど、人間ベースの生物だと処理能力は人間の10倍とか20倍が限界でしょう。なぜ機械的なアンドロイドからこっちにいってしまったのだろうか。というより2つはまったくの別物で、これを同じウォーカロンと表現することに違和感を覚える。まあこれはシリーズを読み進める上で全体像が見えてくるものと信じよう。

あとウォーカロンの興隆とともに人類の衰退が始まっていて、そのあたりが生物学的な話になってくるんだけどその原因がパラサイトイブのパク…とまでは言わないけどかなり影響を受けてるだろう。パラサイトって単語もそのまま使ってるし。さらにそのへんのロジックも荒いというか不明瞭で、さすがの森博嗣も生物学まではカバーしてなかったかーと思わなくもない。それもあってウォーカロンは遺伝子工学に進まないでほしかったな。しかし裏表なくドキドキする展開だったし登場人物も魅力的だったので次作以降に進むのが楽しみです。

そして今回はKindle版で買ってみました。もともと電子書籍はかなり早くから手を出していたんだけど参考書や漫画ばかりで小説は初めてかもしれない。なんとなく小説は紙のほうが雰囲気あるなと思って。

まあ結論としては小説でも問題なく読めました。ただしあと何ページとかそういうものを手触りで把握することができないので芸術を楽しむメディアとして物足りないひとは物足りないだろうな、と思う。俺はあらゆる芸術を複製品で、なるべくならデジタルで楽しみたいと思ってるのでそんなに不満を感じないけど、物事を楽しむのにメディアが何かってことはかなり大切な要素だ。だから紙にこだわるひとはきっとこれからも紙にこだわるだろう。